帰ってきた!島村さん、こんにちは。
創刊から16回に渡って続いた連載「島村さん、こんにちは。」が帰ってきました。
四国のまわりに点在する島、市町村合併により「村」は少なくなったけどその名残を残したユニークな元・村。それぞれ個性豊かな地域を紹介します。
写真家:長岡マイル

写真、映像撮影○長岡マイル
Photos,Movie:Mile Nagaoka
1979年千葉県生まれ。写真大学を中退し、19歳でスウェーデンに渡り写真とビデオを撮りながら放浪。一度、営業の仕事に就くも、再び専門学校でCGやデザインを学ぶ。その後、友人たちと映像プロジェクト「miruプロジェクトを立ち上げる。 2009年「GreenTV Japan」に入社し、クリエイティブ・ディレクターとして活躍。退職後は、日本の限界集落を訪れ、俯瞰した目線で地域の様子や原風景を記録する「たちもとおるプロジェクト」(たちもとおるとは、うろうろする、徘徊するなどの意味)をスタート。
プロジェクトの対象とする場所を探していたところ、インターネット・ディレクターのトム・ヴィンセント氏との出会い、徳島県神山町を訪れる。商店街の長屋をリノベーションしたクリエイティブオフィスに滞在し、東京からの仕事をしつつプロジェクトを進行。昨年、本格的に移住を決意。神山を拠点としながら、全国のあちこちへ「たちもとおる」ことを目指し、目下活動中。

vol.1 徳島県三好市山城町

第1回
徳島県三好市山城町

山城・大歩危 妖怪の村

四国三郎の名で知られる徳島県の吉野川。その中流域に妖怪が棲む村があるという。険しい山々に囲まれた谷あいで、人と、自然と、そして妖怪たちが仲良く共存しているのだ。

児啼爺の故郷

井川池田ICから車で吉野川沿いを走ること30分余り。道の駅大歩危の手前を藤川谷方面へ折れ、さらに山奥へ分け入る。すると、そそり立つ山々にしがみつくように、小さな屋根がぼつぼつと見えてきた。こんな所までと見上げるほど高い場所にも集落がある。
徳島の海岸沿いの人たちが、この辺りの地域の人たちを「そらの人」と呼ぶのもうなずける。この辺りには、何でも妖怪伝承が数多く残る妖怪の町があるという。その数は現在確認されているだけでも110カ所54種類。時折、長老たちが集まっては妖怪談義に花を咲かせていると聞いてやってきた。
四国山地に囲まれた山城町には、平地がほとんどない。車を降りればもれなく坂道。同じような細い山道を何度も間違えながら歩いていると、時折見える民家の屋根が妙に恋しくなる。夜ともなれば辺りは真っ暗。ざわざわとうごめく夜の山は、異界の住人がいてもおかしくないと思わせるに十分だ。民族学者の柳田國男も「妖怪名彙」の中で山城町の妖怪に触れている。
最も有名なのは、水木しげるの漫画でおなじみ「子泣き爺」のモデルとなった「児啼爺」だ。伝承が残る“あざみのたわ”には、石像が建てられ、全国から妖怪ファンが訪れるという。

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