大師の孝養が宿る寺 四国霊場第18番 母養山 宝樹院 恩山寺[徳島県 小松島市]

2013年09月02日

 小松島市田野町は、屋島に逃れた平家を追って源義経が四国へ進軍してきた折に上陸したことで知られる地だ。恩山寺は義経ゆかりの史跡が点在する小高い山にある。寺を目指していくと、山麓に仁王門がぽつんと建っており、その目と鼻の先に巨木が見えた。近づいてみると、ゴツゴツとした3本の大きな幹が根元で一つになっており、木肌は赤く独特の艶がある。異色な姿のこの木は弘法大師ゆかりの「びらんじゅ」で、県の天然記念物に指定されている。

 恩山寺は聖武天皇の勅願により行基が草創。当時は「大日山福生院密厳寺」と号していた。創建から100年余り後、弘法大師がこの寺で修行をしていた時のこと、大師の母君・玉依御前が訪ねてきた。この地は女人禁制であったため、大師は滝に打たれて7日の秘法を修め女人解禁の祈願を成就。山裾の「びらんじゅ」は、それを記念して大師がお手植えされたと伝わる木である。

 大師堂の側に小さなお堂「弘法大師御母公御剃髪所」がある。このお堂には大師のもとで仏門に入った母君・玉依御前が剃り落とした髪と、大師が彫った尼僧姿の「御母公像」が奉納されている。母君が剃髪した折、大師は「末世薄福の衆生の難厄を除かん」とあらたに誓い、山号寺名を「母養山恩山寺」と改めた。大師堂と、その膝元に寄り添うように佇む母君のお堂。その眺めに孝養を尽くした大師の恩情と誓いを見た思いがした。ここでは、参拝する誰もが自らの親に思いを巡らせ、生き方を問い直す時間を与えられるのではないだろうか。

 恩山寺では「滅罪生善(悪いことを良いことに変える)」のご利益がある珍しいお守り「摺すり袈げ裟さ」を授けていただけることも特筆しておきたい。

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画像:四国旅マガジンGajA

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